WordPressマルチサイトの始め方｜構築から運用まで10ステップ解説

複数のWordPressサイトを抱えていて、「更新や管理がしんどいな…」と感じていませんか？

私も制作や相談の現場で、「サイトが増えるたびにログインが増えて、アップデートやバックアップが追いつかない」という声をよく聞きます。

そんなときに候補に上がるのが、WordPressのマルチサイト機能です。でも、仕組みやリスクが少し分かりづらくて、「気になっているけど踏み出せない」という方も多い印象です。

先に結論だけお伝えすると、WordPressマルチサイトは「関連サイトをたくさん持っていて、効率よく運営したいときだけ選ぶべき、強力だけど少し上級者向けの仕組み」です。

WordPressマルチサイトとは？ざっくり全体像をつかもう

WordPressマルチサイトでできることを一言でいうと

WordPressマルチサイトは、1回インストールしたWordPressを土台にして、複数のサイトをまとめて管理できる機能です。管理画面やコアの仕組みは共通で、各サイトの記事や設定は別々に持っている、というイメージに近いです。

通常のWordPressと、マルチサイトにしたWordPressの違いをざっくり表にすると、こんな感じになります。

項目	通常のWordPress（単一サイト）	WordPressマルチサイト
インストール数	サイトごとにWordPressをインストール	1つのインストールで複数サイトを作成
管理画面	サイトごとに別々のログイン	ネットワーク管理画面＋各サイト管理画面
テーマ・プラグイン	サイトごとにインストール・更新	ネットワークで一括インストールし、各サイトで有効化
ユーザー	サイト単位で登録・管理	ネットワーク全体で共有しつつ、サイトごとに権限を設定
トラブル時の影響	基本的にそのサイトだけ	状況によってネットワーク全体に影響する可能性あり

ざっくりたとえると、1つの大きなマンションの中に、たくさんの部屋（サイト）が入っているイメージです。建物の設備（WordPress本体やプラグイン・テーマ）は共通で、部屋ごとの間取りや家具（記事や設定など）は別々になっている、という感覚で捉えてもらえると分かりやすいと思います。

WordPressマルチサイトが向いていそうなシーンの例

どんな場面でWordPressマルチサイトが活躍するのか、具体的なシーンをいくつか挙げてみます。

• 全国展開している会社が、店舗ごとのサイトを同じデザインで大量に作りたいとき
• 日本語版・英語版など、多言語サイトを共通の管理画面から運営したいとき
• ブランドのLPやキャンペーンページを、似た構成でどんどん量産したいとき
• 学校や自治体など、同じルールで複数の部署サイトを運営したいとき

一方で、「サイトが1〜2個だけ」「それぞれデザインも機能も全然違うものにしたい」といった場合は、無理にマルチサイトを使わなくても大丈夫なことが多いです。普通にサイトごとにWordPressをインストールした方がシンプルで、後戻りもしやすくなります。

 

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WordPressマルチサイトを使うメリット

複数サイトの一元管理で、更新作業が一気に楽になる

マルチサイトの一番分かりやすいメリットは、複数のサイトを「ひとかたまり」として管理できることです。

サイトが10個あれば、本来は10回ログインして、それぞれアップデートや設定変更をしないといけません。マルチサイトにしておけば、「1回の作業で全サイト分」がかなり現実的になります。

私も実務で触っていると、サイト数が増えれば増えるほど、「一元管理できてよかった…」と感じる場面が多い仕組みです。

コスト削減と運用効率アップのメリット

WordPressマルチサイトには、時間だけでなくコスト面のメリットもあります。

• 1つのサーバーで複数サイトを動かせるので、サーバー費用をまとめやすい
• テーマやプラグインのライセンスが「1インストール単位」の場合、マルチサイトの方が得になるケースがある
• 新しいサイトを追加するときも、ベースの設定を活かして短時間で立ち上げられる

メリットを整理すると、だいたい次のようなイメージになります。

メリット	具体的な内容	特に効いてくるケース
更新作業の一括化	コア・プラグイン・テーマをまとめて更新できる	5サイト以上を同じチームで運用しているとき
運用コストの削減	サーバーやライセンスを共有しやすくなる	限られた予算で複数サイトを維持したいとき
サイト追加の速さ	共通設定をベースに数クリックで新規サイトを作れる	キャンペーンサイトや店舗サイトを量産したいとき
デザインの一貫性	共通テーマでブランドイメージを統一しやすい	ブランドガイドラインがしっかりしている企業サイト

「たくさんのサイトを、できるだけ少ない手間で回したい」という状況なら、WordPressマルチサイトは検討する価値が大きい選択肢です。

WordPressマルチサイトのデメリットとリスク

トラブル時の影響範囲がとにかく大きい

マルチサイトは、1つのWordPressが複数サイトを支えている構造なので、コアな部分で大きなエラーが起きたときの影響が大きくなります。

こういった問題が起きると、「1つのサイトだけ表示がおかしい」というレベルでは済まず、ネットワーク内のサイトが一斉に不安定になることもあります。ここは、単一サイト運用と比べて、とくに重く見ておきたいポイントです。

テーマやプラグイン、サーバーの制約が増える

マルチサイトに正式対応していないテーマやプラグインも、まだまだ多く存在します。

• ユーザー管理や権限まわりを大きく書き換えるプラグイン
• あまりメンテナンスされていない古いテーマ
• 「単一サイト」を前提とした設計になっている拡張機能

また、レンタルサーバー側にも条件があります。

• マルチサイト機能自体は使えても、サブドメイン型は推奨していないサーバー
• ワイルドカードサブドメインの利用に、別途設定や申請が必要なサーバー

このあたりを確認しないまま進めてしまうと、「やりたい構成がサーバーの仕様上そもそも難しかった」「マルチサイトにしたら動かないプラグインが出てきた」というケースになりかねません。

マルチサイトから元に戻すのがかなり大変

もう1つ大きなデメリットとして、「いったんマルチサイトにしてしまうと、元のバラバラな状態に戻すのが大変」という点があります。

デメリットを一覧にすると、こんなイメージになります。

デメリット・リスク	起こりうる問題	事前にできる対策
トラブル時の影響範囲が大きい	1つの不具合で複数サイトが同時に停止する	検証環境とバックアップを必ず用意する
テーマ・プラグインの制約	想定どおり動かない拡張機能が出てくる	事前の検証と、実績のあるものを選ぶ
サーバー依存の設定が増える	DNSやサーバー設定が分からないと詰まりやすい	サーバーのマニュアルを読み込み、必要ならサポートに確認
元に戻しづらい	個別サイトへの切り出しが手作業になりがち	将来の構成変更も見越して設計しておく

このあたりを踏まえると、「とりあえず楽そうだからマルチサイトにしておこう」という決め方はおすすめできません。あとから構成を変える可能性があるかどうかも含めて、慎重に判断した方が安心です。

 

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WordPressマルチサイトの構成パターン3種類

サブディレクトリ型マルチサイト

サブディレクトリ型は、次のようなURL構造になるパターンです。

• メインサイト：https://example.com/
• 店舗Aサイト：https://example.com/shop-a/
• 店舗Bサイト：https://example.com/shop-b/

本体のドメインの配下に、フォルダのような形でサイトが並びます。設定が比較的シンプルで、多くのレンタルサーバーが対応しやすい構成です。

ブランドサイトの直下に、店舗サイトやキャンペーンサイトをぶら下げていくイメージに近く、「1つのブランドの中に複数のサイトを置きたい」ときに使いやすいです。

サブドメイン型マルチサイト

サブドメイン型は、URLが次のような形になります。

• メインサイト：https://example.com/
• 店舗Aサイト：https://shop-a.example.com/
• 店舗Bサイト：https://shop-b.example.com/

エリアごとやブランドごとにサブドメインを割り当てたい場合は、この構成がしっくり来ることが多いです。ただ、DNSの設定（ワイルドカードサブドメインなど）が必要になるため、サーバーやドメイン側の設定に少し慣れている人向けです。

別ドメイン（ドメインマッピング）型マルチサイト

3つ目は、マルチサイトの内部ではサブディレクトリやサブドメインでサイトを作りつつ、ブラウザから見えるURLは別ドメインにするパターンです。

• 内部URL：https://network.example.com/site-a/
• 表示されるURL：https://brand-a.jp/

このような設定を「ドメインマッピング」と呼ぶことが多いです。ブランドごとに独立したドメインを使いながら、裏側ではWordPressマルチサイトで一括管理したいときに使われます。

3つの構成をまとめると、次のようになります。

型	URL例	向いているケース	主な注意点
サブディレクトリ型	example.com/store-a/	本体サイト配下に店舗やキャンペーンサイトを並べたい	URLが長くなりやすい
サブドメイン型	shop-a.example.com	拠点やブランドごとにサイトを分けたい	DNS設定のハードルが少し上がる
別ドメイン型	brand-a.jp	ブランドごとに独立したドメインを使いつつ一括管理したい	ドメインマッピングの設定や運用が必要

あなたのサイトはWordPressマルチサイトに向いている？

マルチサイトが向いているケースチェックリスト

次の項目が多く当てはまるほど、WordPressマルチサイトを検討する価値が高い状態です。

• 似た構成やデザインのサイトを3つ以上運営しているか、これから増やす予定がある
• 各サイトで入れたい機能は大きく変わらず、共通部分が多い
• 更新やセキュリティ対応を、できるだけ1つの管理画面でまとめたい
• DNSやサーバー設定を任せられる人、または外部パートナーがいる
• トラブル時にネットワーク全体を止めても、きちんと対応できる体制がある

逆に、次のような場合はマルチサイトより個別インストールの方が現実的なことが多いです。

• サイトごとにデザインや機能をかなり自由に変えたい
• クライアントやプロジェクトごとに契約形態が全く違う制作案件が多い
• 将来的に「このサイトだけ別サーバーに移したい」「売却したい」という可能性がある
• 技術に詳しいメンバーがいない、または外注予算があまり取れない

ざっくり比較すると、こんなイメージです。

チェック項目	マルチサイト向き	個別インストール向き
サイト数	5サイト以上が視野に入っている	2〜3サイト程度にとどまりそう
デザイン・機能の共通度	構成がかなり似ている	サイトごとに全く違う
管理体制	技術担当が明確にいる	非エンジニア中心
将来のサイト売却・移転	あまり想定していない	可能性が高い

マルチサイトを避けた方がいい具体的なパターン

「これはマルチサイトにしない方がよさそうだな」という典型パターンも、あらかじめ押さえておきましょう。

こういったケースでは、WordPressマルチサイトよりも、「サイトごとにWordPressを分けておき、必要に応じて管理ツールで束ねる」方が、長い目で見ると柔軟に動けることが多いです。

 

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WordPressマルチサイトを構築する前の準備

サーバー・WordPress・プラグイン環境のチェック

WordPressマルチサイトを使う前に、次のような点を確認しておきましょう。

特に、セキュリティ系・キャッシュ系のプラグインは、マルチサイト環境だと挙動が変わるものもあります。公式ドキュメントやサポートページに「マルチサイト対応」の記載があるか、できるだけチェックしておきたいところです。

バックアップと検証環境を必ず用意する

WordPressマルチサイトの有効化やネットワークの構築は、やり直しが簡単ではありません。最低限、次の2つは用意してから進めるのがおすすめです。

• 本番サイトのフルバックアップ（データベースとファイルの両方）
• 本番と同じ構成をコピーした検証環境（ステージング環境）

検証環境でマルチサイトの有効化やネットワークの設定を一通り試して、問題がないことを確認してから、本番環境に反映する流れが理想です。

WordPressマルチサイトの設定手順

wp-config.phpでマルチサイト機能を有効化

まず、WordPressの設定ファイルであるwp-config.phpに、マルチサイト機能を使えるようにするための1行を追記します。

define( 'WP_ALLOW_MULTISITE', true );

この行は、/* That's all, stop editing! Happy publishing. */ といったコメントの少し上あたりに書くことが多いです。追記して保存すると、管理画面の「ツール」に「サイトネットワークの設置」というメニューが増えます。

ネットワークの設置とwp-config.php・.htaccessの編集

次に、管理画面の「ツール > サイトネットワークの設置」から、ネットワーク全体の設定を行います。

• サブドメイン型にするか、サブディレクトリ型にするかを選ぶ
• ネットワークの名前や管理者メールアドレスを入力する
• 「インストール」を押すと、wp-config.phpと.htaccessに追記するコードが表示される

表示されたコードを、指示どおりにwp-config.phpと.htaccessに貼り付けて保存すると、ネットワーク機能が有効になります。その後、再ログインすると、画面上部の管理バーからネットワーク管理画面にアクセスできるようになります。

サイトネットワークに新規サイトを追加する

ネットワーク管理画面に入れるようになったら、マルチサイトの中に新しいサイトを追加していきます。

• ネットワーク管理画面で「サイト > 新規追加」を開く
• サイトアドレス（サブディレクトリ名やサブドメイン名）、サイトタイトル、管理者メールアドレスを入力する
• 必要であれば、既存ユーザーから管理者を選ぶ

複数サイトを立ち上げたいときは、この操作を必要な回数だけ繰り返すだけでOKです。

ここまでの流れをまとめると、次のようになります。

ステップ	やること	ポイント
1	wp-config.phpにWP_ALLOW_MULTISITEを追記	マルチサイト機能を有効化する準備
2	「サイトネットワークの設置」を実行	サブドメイン型かサブディレクトリ型かを選択
3	表示されたコードをwp-config.phpと.htaccessに追記	ネットワーク機能を本格的に有効化
4	ネットワーク管理画面にログイン	上部バーから「サイトネットワーク」を選択
5	「サイト > 新規追加」でサイトを増やす	必要な数だけサイトを追加していく

 

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WordPressマルチサイト運用のコツと注意点

権限設計と更新ルールを決めておく

マルチサイトでは、「ネットワーク管理者」と「各サイトの管理者」の役割をきちんと分けておくことが、トラブルを減らす近道です。

• ネットワーク管理者：WordPress本体・プラグイン・テーマのインストールや更新、セキュリティ方針の決定
• 各サイト管理者：記事や固定ページの編集、サイト単位の設定変更

この線引きを曖昧にしたままスタートすると、「誰かが勝手にプラグインを追加して、全体が重くなった」「いつの間にかテーマが変わっていた」など、意図しない変更が起きやすくなります。

役割分担のイメージは、次の表のような感じです。

項目	ネットワーク管理者	各サイト管理者
コア・プラグインの更新	担当する	基本的に行わない
テーマのインストール・削除	担当する	原則不可
新規サイトの追加	担当する	不可
記事・固定ページの編集	必要に応じてサポート	メインで担当する
サイト固有の設定変更	必要なときにサポート	メインで担当する

バックアップ・セキュリティの運用ルール

マルチサイトは1つのネットワークに複数サイトがぶら下がる構造なので、バックアップとセキュリティの重要度が自然と高くなります。

特に、ログイン関連の仕様変更やセキュリティアップデートが入ったときは、ネットワーク全体に影響する可能性があるので、慎重に進めるに越したことはありません。

パフォーマンスとトラブルシューティングのコツ

マルチサイトでは、サイト数やアクセスが増えていくと、サーバー負荷も大きくなります。パフォーマンスの面でも、次のような工夫が必要です。

• キャッシュプラグインやCDNを活用して、静的ファイルの配信を最適化する
• 画像圧縮や不要プラグインの削除など、基本的なチューニングを徹底する
• アクセス解析やレポート系など、重い処理をするプラグインは慎重に選ぶ

トラブルが起きたときは、次のような順番で原因を絞っていくと落ち着いて対応しやすくなります。

• ネットワーク全体の問題なのか、特定サイトだけの問題なのかを切り分ける
• 直近で更新したプラグイン・テーマ・WordPress本体を振り返る
• 検証環境で同じ更新を再現し、同じ症状が出るか確認する

マルチサイトでは、「とりあえず本番で試してみる」が大きな事故につながりやすいので、少し慎重すぎるくらいでちょうどいいと考えておいてください。

まとめ：WordPressマルチサイトを選ぶかどうかの判断基準

この記事の内容を簡単にまとめます。

今日できる最初の一歩としては、いきなりWordPressマルチサイトを有効化するのではなく、「自分たちが運営している（またはこれから作る）サイトの数」「構成の似ている度合い」「将来の増え方」「管理できる人員」を紙やスプレッドシートに書き出してみてください。

そのうえで、この記事のチェックリストや比較表と照らし合わせてみると、「マルチサイトを選ぶべきか」「個別インストール＋管理ツールでいくべきか」が、かなりクリアに見えてくるはずです。

 

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